DokuOh ~独墺系クラシック音楽~

クラシック音楽、特に独墺系(ドイツ、オーストリア)の作曲家について、CDレビュー中心のブログです。

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Beethoven Piano Sonata No.14 "Moonlight"

Solomon


TESTAMENT (SBT.1189)



いったいこの音はどこから響いて来るのだろうか。ソロモンの「月光」の一楽章を聴いていると、深い湖の底から響いてくるような、そんな感じがする。そう、シューベルトの最後のソナタのような、底なしの深さがある。
ソロモンがEMIに残したベートーヴェンのソナタ集は、録音の貧弱さを超えて、普遍的な輝きを持っている。透明で寂寥感を湛えた深い響き、テクニックに裏付けされた堅牢な構成、演奏だけならば、超一級品ぞろいだ。その中でもこの「月光」は他を寄せ付けない。一楽章の深さは言語を絶する。深い、底なしに深い。とてもこの世の響きとは思えない。有名曲で手垢にまみれたこの曲がここまで深い曲だったとは。とにかくタッチが絶妙である。起伏が少ないこの曲で、これだけの表情がつけられるとは脱帽である。
三楽章の「抑制された強靭さ」も凄い。外面的、直接的な迫力ではなく、音楽に強固な芯があり、それが迫ってくる。
ソロモンは間もなくして、手の麻痺のために、一切の演奏活動を中止してしまう。喝采を浴びた絶頂でのことである。なんと悲劇的な運命か。後世の人々にとっても大きな損失ではなかったか。貧弱な録音ながら、この録音が残されただけで幸運だが、この録音も、もしも10年後の録音、またはDECCAによる録音だったらという妄想を抱いてしまう。それくらい、演奏活動を続けて欲しかった。
ジャケットの写真の、暖かく人なつっこそうだが、目の奥に寂寥感を宿した高貴な顔が忘れられない。最近、顔に深みのある音楽家が少なくなってきた。「人は見た目による」私は常々そう思っている。もちろん、自分のことは棚に上げて。

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Haydn Piano Trio H12, 14, 26, 27, 28, 29, 30, 31

Andras Schiff
Yuuko Shiokawa
Boris Pergamenschikow


DECCA (476 2576, 2577)



こんなに素晴らしい演奏が、もうすぐ手に入りにくくなるらしいので、急遽取り上げることにした。
「ハイドンの音楽は乾いている」というのは良く見かける評であるが、本当にそうだろうか。シンフォニーはともかく、少なくとも弦楽四重奏などの室内楽や協奏曲にはそう感じないものが多い。ハイドンの音楽は「乾いていて」つまらないという方は、是非ともこの至高のハイドンを聴いて欲しい。
職場の同僚が、もう廃盤になった国内盤を貸してくれたのが、この演奏を知ったきっかけだった。それまでハイドンのピアノ三重奏など聴いたことが無かった。初めて聴いたときは、驚愕した「これがハイドン?」。ロマンティックで愛らしい旋律。いや、これは曲の魅力だけでなく、演奏も素晴らしいのだと思う。シフ夫妻、ペルガメンシコフのトリオは至高のトリオと言える。これ以上何を望むというのだろうか。融和しにくい弦とピアノの音が、これまでに融和している様は、他では聴いた事がない。チェロがペレーニに変わったトリオも素晴らしかったが、こちらも決して負けていないし、三つの楽器の融和という点では、こちらのほうが上だと思う。古典の枠にきちんと収まっていながら、節度があり気品のあるロマン性が素晴らしい。「夢見心地」という表現がぴったりだ。シューベルトを聴いているような錯覚さえ抱く。
モーツァルトのようなH12二楽章、H26一楽章の憂いに満ちた導入、H27一楽章の快活さ、どれも素晴らしい。特にH30一楽章はたまらなく愛らしい。短調になりほんのり寂しげな表情を見せるところ(1:40)など、ゾクゾクする。ハイドンが作曲時にこのようなロマン性を意図したか分からないが、これもハイドンの音楽の持つ一面だろう。
最近、豪ELOQUENCEから廉価で再発されたので、狂喜乱舞して即購入。そして宝物のCDとなった。こんな素晴らしい演奏が2枚で2000円以下とは、なんとももったいない話である。


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ave_verum_koopman.jpg

Mozart "Ave Verum Corpus"

Ton Koopman
The Amsterdam Baroque Orchestra and Chior


ERATO (WPCS-21144)



長女の子守唄を何にしようかと思ったが、今年はモーツァルト・イヤーでもあることから、モーツァルトにすることにした。「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、この曲は世間ではどれくらい有名なのだろうか。私がこの曲の存在を知ったのは、かなり遅かったと思う。モーツァルトの宗教曲というとレクイエムばかり目立つが、もしもレクイエムしか知ら人がいたら、それは人生損をしていると教えてあげたい。
たった45小節、演奏時間4分足らずのこの曲中には、演奏時間一時間を超え、100人以上のオーケストラで奏でられるような大曲以上の内容が詰まっている。とても妻コンスタンツェの看病をしてくれた友人にお礼として書いた曲とは思えない。それだけこの曲を作曲した時のモーツァルトの魂は、神に近しい存在だったのだろう。「天上の音楽」、「天使の歌」、どんな言葉も追いつかない。世の中にこれに匹敵する美しい音楽を探すことすら難しい。あらゆる不浄なものは昇華され、極めて純度が高く、底なしに優しく、そして哀しい。
演奏はコープマン。私が信頼している数少ない音楽評論家の福島章恭氏の著書、「モーツァルトをCDで極める」で推薦してあったので購入した。実はこのCD(載冠ミサとのカップリング)を聴くまでコープマンが苦手であった。福島氏も言及している通り、あのニヤニヤしながら演奏する演奏姿と、そこから出てくる軽い演奏スタイルが好きになれなかった。彼のバッハは世間で絶賛されていても苦手なものが多い。だが、この演奏を聴いて考えを改めた。ハーモニーが美しいのはもちろんのこと、まさに不浄なものが一切なく美しさの限りだ。聴いていると神の慈悲に包まれているような気持ちにさせられる。CDの余白として演奏しただけでは、ここまでの真実味は出ないだろう。この演奏を聴いて、彼の音楽に奉仕する姿勢が少し理解できたと思う。
あさって、妻と長女が退院し帰宅する。家ではこの曲をずっとかけていたい。子守唄にはちょっと贅沢で、高尚すぎるかもしれないが。

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bru5_tintner.jpg

Bruckner Symphony No.5

Georg Tintner
Royal Scottish National Orchestra


NAXOS (8.553452)



ティントナーは今でこそ評価の定まった指揮者であるが、この演奏が発売された当時は、まだまだマイナーな指揮者だった。当時はヴァント/ベルリン・フィルの同曲が発売された直後で、この演奏はその影に隠れていた。初めてこの演奏を聴いたときに、新たなブルックナー指揮者の登場を予感したが、見事に予感は的中した。後発の4,6,7番など、並み居る名盤に肩を並べる名演だと思うし、世間での評価もその後鰻登りだった。マイナーでも実力のある演奏家を発掘したいと常に思っている天邪鬼dokuohは、「にやり」としたのである^^;。
この演奏を初めて聴いた時には、オケの精度がいまいちだなと思ったが、今ではむしろこの「詰めの甘さ」が魅力になっている。ヴァントの演奏は素晴らしいが、いつも聴いていると息が詰まってしまう。ティントナーの演奏は不器用で、素朴極まりない演奏だが、これらはブルックナーに絶対欠かせない要素であり、本質であると思う。きっとシカゴ響好きの金管吹きには、噴飯ものの演奏かもしれない。でもそれではあまりにもったいない。
オケの音はイギリスのオケだからか柔らかく、いい意味で個性が無い、純白の音だ。これがブルックナーに実にマッチしている。いわゆるブルックナーに必要な「偉大な無個性」である。響きだけだと、朝比奈やアイヒホルンに似ているという人もいるかもしれない。指揮者の癖をほとんど感じない。
二楽章を聴いて欲しい。確かに冒頭のオーボエ、その後の木管など、もっと芸が欲しいと思うが、次の第二主題(2:02)!私はここを美しく聴かせてくれないとだめなのだ。弦の深々とした響き。ただの美音だけではない、「大自然の慈悲」がそこにある。
四楽章は流麗さに欠けるが、所々現れる(3:28, 10:11など)弦楽器の美しい響きが印象深い。コーダへの足取りは素朴だが着実である。コーダ(22:46)は重量感十分で、決して並み居る名演に負けていない。呼吸が深く、金管は絶叫しすぎず、美感を保っている。
もう一つこの演奏の魅力は、残響が少な目の録音にある。ブルックナーの素朴さと無骨さがダイレクトに伝わって来る。表面的な美音と残響過多で誤魔化した似非ブルックナーとは残る感動が桁違いである。私はブルックナー教徒として、この演奏を愛する方とお友達になれそうである。

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  • 最近老け込んで、見た目もすっかり年相応になってしまったバカ親パパのサラリーマンです。最近は、仕事、子育て、親の面倒に追われ、音楽を聴く時間もまともに持てなくなってますが、ストレス解消に無謀な数のCDを買いつづけています。^^;

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