DokuOh ~独墺系クラシック音楽~

クラシック音楽、特に独墺系(ドイツ、オーストリア)の作曲家について、CDレビュー中心のブログです。

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Schubert String Quintet

Auryn Quartet

Christia Poltera (VC)

TACET (TACET 110)



音楽を聴きながら、その作曲家の人生や人柄に思いを馳せるとき、涙が出そうなくらい親しみや共感を感じるのはベートーヴェンとシューベルトです。この二人は作曲家の中でも特に身近に感じます。そう、知り合いのような錯覚を覚えるのです。二人の中に自分と同質なものを認めるからでしょうか。
シューベルトに共感し始めたのは、ほんの数年前、三十代に入ってから。今まで少しも心の中に入ってこなかった音楽が、嘘のように心染みるようになりました。人生の辛苦を少し味わい、シューベルトの音楽に潜む絶望を分かるようになったからでしょうか。もうシューベルトの音楽の無い人生など考えられません。
シューベルトの絶望は美しい。絶望すればするほど美しい。「絶望」という言葉に「美しい」という形容詞は不自然であるかと思いますが、私にはそう思えてなりません。そしてその絶望は美しいが故に、妖しく、危うく、時に畏怖すら感じます。さらにその絶望を超えた「美しい虚無」こそ、この作曲家が最後に行き着いた境地ではないでしょうか。それが私の心を掴んで放しません。
世の中の音楽に絶望を漂わせる音楽は沢山ありますが、なぜシューベルトの絶望は美しいのかと想うと、やはり、シューベルトの絶望には類まれな素直さと謙虚さがあると思うのです。他の作曲家のように怨念や執着などが無い。しかし素直であるが故に、謙虚であるが故に、その絶望の純度は上がり、温度は限りなく低くなっていきます。
シューベルトが作曲した数多の曲の中で最も好きなのは、この弦楽五重奏。特に四楽章のロンドは「絶望の舞曲」とも言うべきで、最も好きな楽章です。一般に人気のある二楽章よりも好きです。この楽章にシューベルトの闇が集約されているのではないでしょうか。何度聴いても涙が溢れてきます。
この曲の演奏で一番好きなのは、以前紹介したメロスSQのもので、それに匹敵するのがこのアウリンSQのものです。アウリンSQのシューベルトは本当に素晴らしい。メロスSQの演奏を「静と硬」とすると、アウリンSQは「動と柔」。そそり立つ岩山のような強固な構成力で聴かせるメロスSQとは異なり、過度に感傷的にならないロマンティックさと、ドラマティックさで聴かせます。この異なるタイプの二つの名演を持っていれば、他は無くてもいいでしょう。
アウリンSQのスタイルで、最も効果が出るのは一楽章でしょう。「静と動」の対比がより鮮明に描かれています。まずは、(1:24)からのうねるチェロ!振幅の広いヴィブラートがうねりを生み出し、とても室内楽とは思えない地鳴りのような迫力を生み出しています。(2:01)からの第二主題のチェロのデュエットも、実に豊かに歌いこまれていて素晴らしい。(3:28)から1st Vnが奏でる第二主題の嫌味の無い純度の極めて高い透明な歌。やはりこの曲でも1st Vnのリンゲンフェルダーの音楽性の高さが光ります。
二楽章の(4:43)からの壮絶な絶望感。その後の1st Vnと1st Vcとの対話。天国的だけど実に哀しい。最後はリンゲンフェルダーの独壇場。
三楽章の厚みのある、ドラマティックな表現が素晴らしい。最後の終わり方の決まりのよさ!
そして四楽章。この楽章の潜む深い絶望、闇がきちんと表現されていないとだめですが、アウリンSQは見事に表現しています。第二主題はルバートをかけて非常に艶かしく、ロマンティックに奏でられます。これだけ歌っているのにいやらしくならないのはさすがです。この楽章でも一番好きな部分、展開部の最後から第二主題が戻ってくるところ(6:09)で、ふわっと湧き立つ第二主題とその後の絶妙な深い呼吸。なんと優しく、切ないのか!もう涙なくしては聴けません。コーダの迫り来る闇にも絶句。

久しぶりにシューベルトの闇の引力に引き寄せられてしまいました。すぐにこの引力から逃れられるのでしょうか。ちょっと不安です。

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コメント

出ましたね、クインテットが

こんばんは。久しぶりにでましたね、シューベルトが。私は室内楽の取っつきがよくなくてほとんど聴くことがないのですが、dokuohさんのシューベルトを紹介するときの文章は一種独特で、言葉の選び方して何か「悟りを開いた」そんな印象を持っています。カルテットの時の紹介文も静かな文章でしたが、その裏に「魂の叫び」を聴いて欲しいといったような、メッセージが私には届きました。さて弦楽五重奏曲ですが、ハインリッヒ・シフとアルバンベルク四重奏団のものが特に印象に残っています。とところでレーベルを見て驚きました。タセットはデビュー当時、録音の素晴らしさで名をはせたレーベルなんです。特にTACET 10、47は・フローリン・パウル(Florin Paul)のバッハの無伴奏ヴァイオリン曲集は、CDの録音でも画期的なものです。演奏も、知られてはおりませんが名演です。オーディオ・マニアなら必ずとは申せませんが、持っていなくとも、「ああ、あれね」とうなずくのですが、世間ではどれほど知られているでしょうか。

  • 2006/08/12(土) 02:26:14 |
  • URL |
  • calaf #-
  • [編集]

TACET

calafさん、
こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
シューベルトの闇と共鳴するのはちょっと危険だと思っているのですが、それだけシューベルト、特に晩年の作品には思い入れがあります。なので、ついつい言葉を選んで書いてしまいます。
TACETは優秀録音で有名ですよね。ただ、本文中で述べるかどうか迷ったのですが、実はTACETの音作りはあまり好きではありません。確かに高音の美しさなど音としては大変素晴らしいのですが、楽器の生の音が失われ、感動が半減している気がするのです。この演奏も弦楽四重奏のCPOやHMFのナチュラルな音だったらもっと壮絶だったろうと思います。(小生の再生装置のせいもあるのかもしれませんが。)
パウルのバッハは前から気になっていました。一部の方には有名な録音ですよね。是非とも聴いてみたいものです。

  • 2006/08/12(土) 22:48:35 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]

独り言

やはりシューベルトでしかも室内楽というとコメントがつきにくいのでしょうか。こんなに素晴らしい曲なのに。
どなたか、シューベルトについて語りましょう!

  • 2006/08/13(日) 22:42:58 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]

あけましておめでとうございます。
アウリンSQの弦楽四重奏曲ト長調を聴いて、感激致しました。拙ブログに記事を載せましたので、宜しければ覗いてみて下さい。
こちらでご紹介の五重奏曲も、是非、聴いてみたいのですが、ネットで探してもなかなかみつかりません。
DokuOhさんにとって、素晴らしい一年となります様、お祈り申し上げます。
本年も宜しくお願い致します。

  • 2010/01/05(火) 18:56:04 |
  • URL |
  • Kapell #n53L/O22
  • [編集]

明けましておめでとうございます。

Kapellさん、

明けましておめでとうございます。また、返信がとても遅くなって申し訳ありません。

このブログを立ち上げた動機の一つが同弦楽四重奏団の知名度を上げることだったのですが、Kapellさんのように共感していただける人が増えてとても嬉しいです。今後も自称ファンクラブ日本支部部長を続けたいと思います(笑)。弦楽五重奏も是非お聴きください。

今年もよろしくお願い申し上げます。末永くお付き合いいただけると幸いです。

  • 2010/01/09(土) 00:04:58 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]
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