DokuOh ~独墺系クラシック音楽~

クラシック音楽、特に独墺系(ドイツ、オーストリア)の作曲家について、CDレビュー中心のブログです。

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Schubert Klavierstücke D946

Claudio Arrau


PHILIPS (475 7947)



シューベルトの全てがここにある。生意気書きましたが心からそう思います。救いようの無い深い闇と優しく包み込む慈しみ。すでにこの世とは別の世界を見ていたシューベルトの音楽を、ここまで表現した例はそうあるものではありません。美しくもとても危険な恐ろしい世界が広がっています。自分の存在が闇に飲み込まれ、消えてしまうような恐怖を感じます。音楽を聴いて久しぶりに号泣しました。これがたった一つのピアノという楽器がつくり出せる世界なのか?晩年にここまでの境地に達したアラウに、ただただ頭が下がらずにいられません。
この曲を初めて聴いたのは、去年メジューエワのリサイタルを聴いた時でした。それ以来CDは購入しようと思いつつも購入していません。このCDが初めて買ったCDです。即ち曲の理解が浅く、メロディーの断片が脳裏に残っているだけの状態にも関わらず、一度聴いただけで号泣してしまったのです。こういう経験はそうあるものではありません。
曲の充実度から始めの二曲が特に素晴らしく、シューベルト演奏の最高峰でしょう。

第一曲。第一部の沸くように静かに迫ってくる深い闇。脚を取られそうになる恐怖。アラウの音は切れの良い音ではなく、少し野暮ったいのですが、それが生み出す深みは凄いものがあります。これだけ深い音はそう出せるものではありません。もうテクニックとかとういうことを論じること自体虚しいことだと感じられるのです。
第二部、第三部の深く、全身を包み込むような音。なんという慈愛に満ちているのだろう。ただの美音ではなく、すべての音に慈しみがあるのです。しかもいつもどこかもの寂しい。

第二曲はさらに凄いことになっています。これほど恐ろしい曲、演奏が他にあるでしょうか。
第一部のアラウは優しくささやくように語り掛けてくるようです。しかし、さわやかな憧憬の中に影を感じます。美しくも絶望の霧に包まれています。
第二部は恐ろしい、本当に恐ろしい。不気味に蠢くモチーフ。この音楽に身を浸していると、周りが虚無の宇宙空間に変貌し、そこに落ちていくような恐怖を感じ、体が震え涙が出ます。
第三部はもう虚無しかありません。出口が見えない救いようのない絶望。声高に叫ばないがゆえに聴き手に迫ってくるのです。そして第一部のテーマが戻ってくるところで、胸が引き裂かれそうになってボロボロに泣いてしまいました。なんと痛々しいのだろう!明るい音楽なのにどうしてこんなに切ないのだろう!どうかここを第一部の冒頭と比べてみてください。絶望の純度がはるかに高くなっています。曲調は明るいのにとても儚く、もう痛々しくて聴いてられません。ああ、シューベルト、あなたはどうしてここまで絶望しなくてはならなかったのか。それを想うだけでも涙が出てきます。

もう、これ以上語れません。今日は久しぶりに言葉の無力さを感じました。

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コメント

以前未完成が苦手、と申しましたが・・・

シューベルトは大好きなのです。
ピアノソナタD.959、960、弦楽五重奏曲、
弦楽四重奏「断片」
あたりは特に好きですね。

音楽を聴いて涙できる・・・羨ましい限りです。
私自身の経験で言えば、ロ短調ミサを
初めて聴いたときくらいですね。

ところでアラウですが、私はピアノを聴くのがが滅法苦手で・・・;
上記三大ソナタも、下手くそながら自分で弾いて、一人で感動しております。

しかしDokuoh様のレビューは、そんな私にも
聴きたくなる気持ちを湧かせずにはおれません。また購入予定リストにBOXが加わる・・・

  • 2006/10/24(火) 22:51:40 |
  • URL |
  • kyrie #-
  • [編集]

シューベルト好き!

kyrieさん、
こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
kyrieさんがシューベルト好きとはとても嬉しいです。しかもクインテットがお好きとは!拙ブログにも思い入れを書いていますが、クインテットは大の好物で、かなりのCDを持っています。弦四では15番がダントツで好きですね。弦四、五はアウリンSQ、メロスSQ、ライプツィヒSQが素晴らしいですよ。
ところで、ピアノを聴くのが苦手とは何とも辛いですね。ではこのアラウを聴いて解消してください。決してCDショップの回し者ではありません(笑)。それくらい凄い演奏です。

  • 2006/10/25(水) 00:41:38 |
  • URL |
  • dokuoh #eDHzNJpM
  • [編集]

巡り会い

こんばんは。とうとう巡り会いましたね。オーケストラをよく聴く人はピアノなどの単独楽器のよさはなかなか理解できても馴染まないものです。ここにシューベルトを媒体としてピアノがピアノでなく音楽として捉えられたと思います。もちろんアラウの功績が大ですね。アラウのその他革新的な演奏としてリストのソナタロ短調をあげましたが、まだたくさんあります。もっとも身近なのはショパンの夜想曲です。表現はむしろバラードに近くとてもはハードボイルドな演奏です。機会があればどうぞ。ショパンの夜想曲の既存のイメージを一変します。

  • 2006/10/25(水) 23:32:00 |
  • URL |
  • calaf #-
  • [編集]

巡り会ってしまいました

calafさん、
こちらにもコメントありがとうございます。
巡り会ってしまいました。ピアノ独奏でここまで感動したのは久しぶりです。アラウでは悲愴にとても感動しましたが、今回の感動はそれ以上です。
アラウのショパンはイメージが沸きませんが、興味あります。さあ更なる散財をしてみますか(苦笑)

  • 2006/10/26(木) 17:31:26 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]
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  • 最近老け込んで、見た目もすっかり年相応になってしまったバカ親パパのサラリーマンです。最近は、仕事、子育て、親の面倒に追われ、音楽を聴く時間もまともに持てなくなってますが、ストレス解消に無謀な数のCDを買いつづけています。^^;

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