Mahler Symphony No.4
Bernard Haitink
Christine Schäfer (Sp)
Royal Concertgebouw Orchestra
RCO LIVE (RCO 07003)
ハイティンクと彼が長く常任指揮者を勤め、既に退任したロイヤル・コンセルトヘボウ管(旧アムステルダム・コンセルトヘボウ管)とのコンビが帰ってきました。この演奏は常任指揮者就任から五十周年を記念して演奏されたもので、往年の名コンビを彷彿させる素晴らしい演奏です。ハイティンクの精緻なスコアの読みが、コンセルトヘボウ管の黄金の絹の音によって最高の形で具現化されています。やはりハイティンクは最もオーケストラの長所を引き出す才に長けた指揮者だったのはないでしょうか。シカゴ響はシカゴ響、シュターツカペレ・ドレスデンはシュターツカペレ・ドレスデン、そしてこのコンセルトヘボウ管はコンセルトヘボウ管と、そのオケの「味」が出ています。ハイティンクの演奏には総じてオーケストラの個性を楽しむ悦びがあります(ただし、オケの個性の強烈さゆえかウィーン・フィルだけは例外かもしれません)。
ハイティンクのクリスマスマチネー・ライブのマーラーの4番は私の愛聴盤の一つであるのですが、録音の良さも相まって、この演奏はそれを超えるものとなりました。シカゴ響との3番同様、最近のハイティンクはより地に足が付いた大きな構えの音楽になっており、「一音一音空間に刻み込む」といった感じで一切流すことがなく、音楽の密度が濃いのです。クリスマスマチネー・ライブよりも音のドラマには欠けますが、その分一音一音がより意味深くなっています。
一楽章冒頭のヴァイオリンの第一主題から、粒度が細かく密度が濃い滑らかな弦の音に、「嗚呼!コンセルトヘボウ!」とこのオケからまだこのような音が出てくることに喜びを覚えます。第二主題のチェロのなんという深々とした歌!しかもカンタービレのみならず、音楽の骨格がよりしっかりしていて堂々として充実した響きを楽しませてくれます。
二楽章は美しすぎ多少不気味さにかける気がしますが、その美しさに見を浸すのは悪くありません。ヴァイオリンのソロのなんと上手いこと!
三楽章はもう夢見るほどに美しく、弦がどこまでも繊細に歌い続けます。しかも各楽器のバランス、テンポも完璧で、これだけ歌っていながら音楽が停滞することが一切ありません。フレーズの着地の仕方が完璧です。最後のトゥッティではまるで沢山の星が空高く打ち上げられるようで、その後の遠鳴りする弦楽器の美しさといったら!涙を禁じ得ません。4番を聴いてここまで感動したことがあったでしょうか。
四楽章の独唱は、私にとってはポップによるかけがえのない演奏があるので不利ですが、この演奏のシェーファーは及第点です。この独唱で何よりも大切なのは、技巧臭がしない自然体を獲得していることですが、シェーファーの独唱はクリアしています。最後で死を臭わせる寂寥感がもっと欲しいところですが、それは贅沢な望みでしょう。この曲の独唱としては上位に来る歌唱ではないでしょうか。最後の管弦楽の消え方も素晴らしく、しばらく聴衆が感動の余韻に浸っている空気が録音を通して伝わってきます。
最近のハイティンクはいよいよ彼の音楽の総仕上げに入ってきたように思います。これからのリリースに目が離せません。
『HMV - 交響曲第4番 ハイティンク&コンセルトヘボウ管弦楽団、シェーファー(ソプラノ)(ライブ盤, ハイブリッド)【SACD】-マーラー/音楽/HMV』
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