
Mahler Symphony No.5
Bernard Haitink
Amsterdam Concertgebouw Orchestra
Philips (464 321-2)
クリスマスマチネー・ライブの中でも、この5番は私にとっては究極の演奏で、この演奏に心酔しきっています。もう他のマラ5は考えられないというほどに。
支離滅裂で全部を聴き通すのが辛いこの曲を、大音響ではなくメルヘンと滑らかで均整の取れた歌、そして程よいテンションによって最後まで聴かせてくれる数少ない演奏です。
一、二楽章の気難しい音楽を、勢いや情念に任せるのではなく、音符の持つ力をそのまま引き出し、昇華することによって均整の取れた音楽を聴かせてくれます。ゆえに聴き疲れせず、最後まで聴くことができます。ところどころ見せる弦の不安定な響きも美しい。
三楽章は短絡的に明るく演奏するのではなく、どこか遠鳴りするような奥ゆかしさがあります。なんとメルヘンチックな美しい音楽!
白眉は四楽章、有名なアダージェット。もうこれは唯一無二の究極の名演で、これ以上の演奏は考えられません。とにかく、テンポが素晴らしい。ゆっくり目のテンポでフレーズは深く呼吸し、有機的に繋がり、その消えゆく様はまるでふっと空に雲が融けるよう。そしてむやみに官能に溺れない。だからこそ余計に切ない。
最初から繊細の極みでたっぷり憂いを含み、静かにため息をつき、歌う、歌う。多少粘度を持ち、全てのフレーズは深くため息をつき、そのため息を一つ一つ慈しみながら奏でられる。そして、それが不自然だったり、恣意的なところは全くなく、まるで決して手の届かない想い焦がれた美しい女性を目の前にしながら、ふっとその美しさに吸い込まれ切なくなるかのように、どんどん音楽に堕ちていく。
特に最初のテーマが戻ってくるところの繊細さと静けさは、震えぜずにいられません。極度に引き伸ばされたテーマが、やるせなく涙が止まりません。
そして、最後。音楽が盛り上がり、フレーズの着地する様を聴いてください。これほどに心を揺さぶる演奏があるでしょうか。
五楽章冒頭のホルンを遠鳴りするところからセンスが抜群。音楽が盛り上がってからも音楽に勢いがあり、テンションも十分で最後の追い込みなど十分なカタルシスを味わうことができます。また、弦の歌は常に滑らかで艶があり、ただ勢いに任せていない美しさがあります。
残念ながら、世評の高い某演奏は私には「音の暴力」としか思えず、「音楽」ではなく、「音響」しか聴かせてくれない演奏だと思えてなりません。それも一つの解釈だとは思いますが、少なくとも私の中にあるマーラー像は大音響の裏にある素朴でシャイなところにあるのです。(こんなことを書くと多くの人を敵に回しそうですが・・・)
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