DokuOh ~独墺系クラシック音楽~

クラシック音楽、特に独墺系(ドイツ、オーストリア)の作曲家について、CDレビュー中心のブログです。

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Tchaikovsky Symphony No.6 "Pathetique"

Valery Polyansky
Russian State Symphony Orchestra


CHANDOS (CHAN 9356)



「ジュリーニを上回る歌」と言われてもにわかには信じ難いと思います。ジュリーニこそは誰もが認める歌の人であり、そのジュリーニより歌に溢れた演奏というのは想像できなくて当然です。このポリャンスキーの演奏は史上最も歌に溢れた「悲愴」ではないでしょうか。しかも爆演が多いロシア系指揮者とロシア系オケでその演奏が行われているのです。

「ジュリーニを上回る歌」と言ってもジュリーニのそれとは全く一線を画しています。このポリャンスキーの演奏は、通常我々が持っている「悲愴」に対するイメージを覆すほど、繊細で静かな歌に埋め尽くされています。ロシア系音楽の持つ強音の音響効果など一切目もくれず、ひたすら静かに歌い続ける演奏です。この曲は強弱記号の幅が非常に広く、下はppppppから上はffffまでありますが、強音は控えめで、fが二つ少ないかと思われるように最強音でも決して絶叫しません。常に静寂が支配しています。この静寂がもたらす得も言われぬ寂寥感。非常に内省的で、悲しみの感情は心の内側に内側に沈み込んで行きます。激しい慟哭ではなく、目にそっとハンカチを当てすすり泣くのです。

一楽章、第二主題の美しさといったら!振幅は広くないのに、細部まで歌に溢れており、透明でどこか物悲しい。正に「心に染み入る」という表現がぴったりの感動です。展開部は決して絶叫しません。では物足りないかというと全くそういうことはなく、音楽は常に泣いています。激しい曲想でも常に丁寧に歌い込んでいるのです。

二楽章は稀有な体験をさせてくれることでしょう。これほど夢中になって聴いた二楽章は他にはありません。一種の浮遊感すらある静かな歌、遠鳴りするメロディーが心に融けていきます。鳴っている音と自分との距離があるにも関わらず、音楽は心の中の隅々まで行き渡り、静かな感動を呼ぶ。これは非常に不思議な体験です。こんな体験は他の演奏ではありません。

三楽章はチェリビダッケ並みにテンポが遅いですが、チェリビダッケほど弛緩していません。チェリビダッケが細部の構造を明らかにしようとしてテンポが遅くなるのに対し、ポリャンスキーは細部を歌おうとしてテンポが遅くなります。この違いは大きいです。

四楽章は信じられないほど内省的で美しい。冒頭から抑揚は最小限に抑えられ、悲しみが心にゆっくりと染み渡ります。フルートのソロからのヴァイオリンの歌い込まれ方は尋常じゃありません。その後の沈鬱な表情など、これしかありえないと思わせます。ふっと沸いてくるヴァイオリンの美しさには絶句。

音楽の面白さは、音楽の振幅が必ずしも感動に結びつかないところにあります。ポリャンスキーの演奏は初めて「悲愴」で音楽の大きな振幅なしに、深い感動を与えてくれた演奏かもしれません。

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コメント

こんにちは。こちらはまだ桜が満開です。なんとなく心が和みます。
DokuOh さん推薦のCDを何枚も購入しましたので、報告しますね。アウリンSQのシューベルト全集、フリッチャイとポリャンスキーの「悲愴」、ライプツィッヒSQ他のブラームス / 六重奏曲・・・とりあえず以上です。
アウリンSQは素晴らしいですね。まだ数曲しか聴いてませんが。じっくり愉しみます。フリッチャイの「悲愴」は哀しみをゴリゴリゴゴッーと押し出したような印象を受けました。凄い演奏ですけど日常愉しむものではないですね。職場で不愉快なことがあった日に、あいつなんか死んじまえ~の気分を助長させて、藁人形まで作ってしまいそう。ポリャンスキーのは健康な「悲愴」で、私は好きです。冬の爽やかな風を感じました。いままで誰もコメントしてないから、ここにコメントしておきますね。
ライプツィッヒSQ他のブラームス / 弦楽六重奏曲は期待外れでした。ルイ・マル監督の映画「恋人たち」にも使われた第二楽章が、充分歌い尽くせていないと思います。私はこの曲ならフランスのパスキエ兄弟他のCDを愛します。重すぎず、しかし軽くもなくて、歌うべきところは歌いぬいてます。仏ハルモニア・ムンディ HMA1951073 機会があれば聴いてみて下さい。

ほどほどに(笑)

あきさん、

こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
とうとう買ってしまいましたか。ちょっと責任を感じてしまいます。天邪鬼でマニアの趣味ですので、参考までにして、ほどほどにしてくださいね(笑)。
アウリンSQのシューベルトは今のところ百発百中で絶賛していただいています。お気に召してよかったです。本当に素晴らしい演奏だと思います。私の宝物です。
フリッチャイは何年かに一度しか聴けないですよね。それにしても「わら人形」とは物騒な(笑)。
ライプツィヒSQの演奏は、私も最初あきさんと同じ感想を持ちました。それでお蔵入りしたのですが、しばらくして何度となく聴いてみたら、その素晴らしさに開眼しました。確かに二楽章は淡々としていてそのニュアンスが分かりにくいと思います。しばらく付き合ってみてください。別の側面が見えてくるかもしれません。
レ・ミュジシャンの演奏は聴いていますよ。フランスならではの節回しが独特ですよね。私も好きです。ただ、最近はこのような演奏よりもよりライプツィヒSQのような演奏のほうに惹かれるのです。

どちらにせよ、紹介した演奏に興味を持っていただけて大変嬉しいです。

  • 2008/04/12(土) 23:27:36 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]

ポリャンスキーの名盤

DokuOhさん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

このポリャンスキーの記事を拝読して興味を持ち、暫く前に三大交響曲のセットCDを購入していましたが、ようやく小生のブログで記事にしました。悲愴も素晴らしいですが、4番、5番にも非常に感銘を受けました。
貴重な情報のご紹介ありがとうございました。

  • 2011/01/14(金) 00:28:52 |
  • URL |
  • ハルくん #SIR.BgG2
  • [編集]

今年もよろしくお願いいたします

ハルくんさん、

遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

休眠中のブログにコメントいただき、ありがとうございます。しかも、ポリャンスキーの演奏とは!本当に素晴らしい演奏だと思います。合唱指揮者ならではのアプローチですね。ブリリアントから4,5番も含めたセットが出ているとは知りませんでした!これらはずっと探していたのですが、手に入らずじまいでした。情報ありがとうございます。

  • 2011/01/20(木) 23:53:10 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]

来日しますね

dokuohさん、こんにちは。
ご無沙汰しています。お元気ですか。

ポリャンスキー/ロシア国立響が来年夏に来ますね。それもチャイコの三大交響曲を一つのコンサートで演奏するという凄いプログラム。既に横浜公演のチケットを購入してあります。まさか日本でこのコンビの生演奏が聴けるとは思いませんでした。

  • 2014/12/14(日) 11:40:02 |
  • URL |
  • ハルくん #SIR.BgG2
  • [編集]

情報ありがとうございます!

ハルくんさん、

コメントをありがとうございます。ご無沙汰しております。元気にしております。

有益な情報をありがとうございます!これは絶対に聴きに行きます!悲愴のみならず、後期三大交響曲とはたまりません。近くの芸劇でもいいですが、横浜まで足を延ばしてハルくんさんとお会いするのもいいですね。

  • 2014/12/14(日) 19:40:59 |
  • URL |
  • dokuoh #TquaeRfg
  • [編集]
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