
Beethoven Symphony No.9 "Choral"
Rafael Kubelik
Chor und Symphnieorchester des Bayerischen Rundfunks
ORFEO (C 207 891 B)
数ある第九の中で、これが私の最も愛する第九である。初めて聴いたときはあまりの素晴らしさに、心から感動し、最新の録音でこれだけの演奏が聴けることに狂喜し、初めてフルトヴェングラーの呪縛から逃れられることが出来た。それ以来、第九といえばこの演奏である。クーベリックの第九には、熱さの中に優しさと計算された見通しの良さがあり、熱狂と知性のバランスが取れている。何より素晴らしいのは、響きがとても深く密度が濃いことである。
第九の評価の際、この曲の最高傑作である一楽章を、どれだけ深遠に格調高く演奏してくれるかがとても重要だ。クーベリックはうねるようなフレージングと、何より深遠な響きで、最高の一楽章を聴かせてくれる。全く劇的な表現を伴っていないにも関わらず、スケールが非常に大きい。特に展開部の巨大な威容は言語に絶する。ここまでの演奏はフルトヴェングラー以来ではないだろうか。
二楽章も一楽章と同様に直接的な迫力は無いものの、響きが深い。トリオでの寂寥感、美しさ。
三楽章の美しさ、優しさは一楽章と共に特筆すべきだろう。第一主題の変奏でのヴァイオリンがすすり泣くような表現がたまらない。
そして四楽章。先にも述べたが、私がこの曲で一番好きなのは、低弦のレティタティーボの後に歓喜主題を管弦楽で奏でる部分だ。特に、ヴァイオリンが旋律、チェロが対旋律を奏でるところは最も感動的で、涙無しには聴けない。クーベリックはこの最も感動的なところを最も感動的に聴かせてくれる。だんだんクレッシェンドし、頂点に向かうとき、チェロの対旋律をやや強めに出し、うねる歌が聴き手の心をえぐっていく。大げさかもしれないが、この愛に満ちた歓喜主題を聴くと、心から勇気付けられる。合唱、独唱も見事の一言に尽きる。アレグロ・アッサイの最後の盛り上がり、有名なアレグロ・エネルギーコの入りでの祝典的盛り上がり。さらに凄いのが、二重フーガの盛り上がりだ。ゆっくり目のテンポで雄大に歌われる。コーダのプレスティッシモはやみくもに突進するのではなく、ゆったり構えて雄大に終わる。始めは違和感があるかもしれないが、その威力は圧倒的である。
これだけ素晴らしい演奏が、あまり有名でないのが不思議でならない。クーベリックのライブ録音の中でも出色の演奏だと思うのだが。
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