
J.S.Bach Organ Works
Helmunt Walcha
DOCUMENTS (223489)
最近、夜家で仕事をしながら音楽を聴くのを楽しみにしている。マンション暮らしで聴く時間帯も遅いため、管弦楽は聴くわけにはいかず、室内楽、器楽曲などをもっぱら聴いている(もっとも、最近は管弦楽を聴く頻度はめっきり減ったので支障ないのだが)。仕事するにあたり、集中力を高め、俗世間と隔絶した世界に自分を放り込みたいとき、一番いいのがバッハの音楽である。それも厳格なバッハ。となると頭に浮かぶのが、リヒターとヴァルヒャだろう。今は、ヴァルヒャのオルガンに心酔している。
ARCHIVに残したモノラル、ステレオ録音のバッハのオルガン曲集は、CDが安くなったといっても高値の花で、有名曲が聴ければいいという浅はかな思いから、ステレオの選集を持つにとどまっていた。多くの演奏家の演奏を聴いたわけではないが、その演奏は、バッハのオルガン曲と言えばヴァルヒャと、反射的に思い浮かぶほど、自分の中では別格の存在になっている。最近、超廉価盤としてDOCUMENTSというレーベルからARCHIVのモノラル録音が発売された。録音年が古いというのもあり、「安かろう、悪かろう」で最初は購入を躊躇していたが、後悔したくないと思い購入。これが大正解だった。
薄学ゆえ詳細は分からないが、オルガンという楽器は楽器の特性上、強弱や微妙なアーティキュレーションを出すことは出来ないはずだ。なのに、なぜこれほどまで他の演奏家と隔絶した、偉大な個性があるのだろう。厳格で強固な構成力、揺るぎのないスケール。とてつもなく厳しい。私情を排し、ただひたすら作品に内包する普遍性を露わにする努力を重ねた結果とでも言おうか。幼くして視力を失うというハンデを乗り越えて、遥かな高みに達した求道者の言葉を聴ける。ステレオ録音よりも、求心力があり、人類の至宝といっても大げさではないだろう。
この全集は有名な前奏曲とフーガ、トッカータとフーガ以外の曲を多く収録しており、バッハの多くの傑作に接する機会を持てた。特に感動したのはパルティータ「ようこそ、慈悲あつきイエスよ」(BWV768)で、コラールの壮麗さには言葉を失った。壮麗さはあのパッサカリアとフーガに負けていない。
録音年代が1947年から1952年のモノラル録音にも関わらず、極上の音質で鑑賞にはなんの支障もない。とても50年前の演奏とは思えないくらい瑞々しい音で、ダイナミクス・レンジも広い。音質もいい上に、こんなに素晴らしい演奏が10枚組で2000円足らずなのだから、これほどコストパフォーマンスがいいCDも珍しいのではないだろうか。家宝として一家に一セット持って欲しい演奏である。
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